遺言執行者について

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きを行う職務権限をもつ人のことです。誰が遺言執行者となるかは、以下のいずれかの方法により決められます。

■遺言で指定された者 または 遺言で指定を委託された第三者から指定された者
指定された者は、当然に遺言執行者になるというわけではなく、遺言執行者に就職するかどうか決めることができます。

■家庭裁判所で選任された者
遺言での指定または指定の委託がない場合、指定された人が死亡した場合、指定された人が就職を拒否した場合などに、利害関係人の請求により家庭裁判所で選任します。

なお、未成年者と破産者は、遺言執行者となることはできません。

遺言執行者の職務権限

どのような時に必要となるのか

遺言執行者でないと手続きできない事項

以下の事項は、遺言執行者でないと執行できないものになりますので、遺言で遺言執行者が指定されていなければ、家庭裁判所で選任する必要があります。

【遺言による認知】
遺言による認知は、遺言執行者が、その就職の日から10日以内に、届出をしなければなりません。(戸籍法第64条)

【推定相続人の廃除・廃除の取消し】
遺言者が、遺言で推定相続人を廃除する意思表示をしたときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、家庭裁判所にその推定相続人の廃除の請求をしなければなりません。

また、遺言者が生前に、推定相続人の廃除の手続きを行っていた場合に、遺言でその推定相続人廃除の取消しの意思表示をしたときにも、上記と同様に、遺言執行者が廃除取消しの手続きをしなければなりません。

【一般財団法人の設立】
遺言者は、遺言で、一般財団法人を設立する意思を表示することができます。この場合、遺言執行者は、遺言の効力が生じた後、遅滞なく、遺言で定めた事項を記載した定款を作成しなければなりません。

遺贈の場合

遺贈の執行として具体的にどのような手続きをとるかは、遺贈の対象となる物によって異なります。

【不動産】
遺贈の登記手続きは、相続登記とは異なり、受遺者(不動産を遺贈された人)が単独でできるものではありません。以下のような共同申請を行うことになります。

遺言執行者が遺言で指定されている場合
受遺者を登記権利者、遺言執行者を登記義務者として、共同申請する。

遺言執行者が遺言で指定されていない場合
受遺者を登記権利者、遺言者の相続人全員を登記義務者として、共同申請する。
ただし、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらえば、相続人の手をわずらわせることなく、受遺者と遺言執行者とで登記することができます。

【預貯金】
実務上、多くの金融機関において、遺言執行者が指定・選定されている場合には、遺言執行者が必要書類に署名・捺印をして、払戻しや名義変更の手続きをすることになります。遺言執行者がいない場合には、受遺者と相続人全員の署名・捺印が求められます。

なお、遺言執行者がいても、場合によっては、相続人全員の署名・捺印が求められることもあります。

「相続させる」旨の遺言の場合

「相続させる」旨の遺言とは、「私の財産すべてを長男○○に相続させる」「どこどこの土地を長女××に相続させる」といった内容の遺言のことです。

このような遺言の場合も、相続手続きの対象となる物や事案によって、遺言執行者の職務権限がどこまで及ぶのかが異なってきます。

【不動産】
登記実務上、対象の不動産が被相続人名義である限り、受益相続人が単独で登記申請をすることができるので、遺言執行者の職務は顕在化せず、遺言執行者は登記手続きをする権利も義務もないとされています。

ただし、どんな場合でも執行の余地がないとされているわけではありません。対象不動産の名義が被相続人から第三者に移されてしまった場合など、遺言の実現が妨害されている状況においては、遺言執行者の職務が顕在化し、遺言執行者が不実の登記の抹消登記手続きを求めたりすることができます。

また、「どこどこの土地を売却し、その売却代金から諸経費を差し引いた金額を、相続人A、B、Cにそれぞれ3分の1づつ相続させる」というような、いわゆる清算型遺言であった場合には、遺言執行者がいないと、相続人全員が協力して相続登記や売買による登記をしなければならないため、手続きがスムーズに進まないおそれがあります。
この点、遺言執行者がいれば、遺言執行者が相続人全員の代理人として登記手続きをすることができますので、遺言執行者を指定・選任するメリットがあると言えます。

【預貯金】
実務上、多くの金融機関において、受益相続人が払戻しや名義変更の請求をした場合はもちろんのこと、遺言執行者が当該手続きの請求をした場合にも対応してもらえます。

執行の余地がないとされる事項

遺言者の死亡と同時にその効力が生じるため、遺言執行の余地がないものです。例として、以下のようなものがあります。

  • 相続分の指定・指定の委託
  • 遺産分割方法の指定・指定の委託
  • 遺言の撤回

遺言執行についてご相談ください

当事務所では、遺言執行者の選任申立書類作成や遺言執行者就任の業務を承っております。お気軽にご相談ください。

■遺言執行者選任申立て書類作成の費用

司法書士報酬 33,000(税込)
※この他、遺言書1通につき800円の収入印紙、戸籍謄本等の取得代、送料等の実費がかかります。

■遺言執行業務(遺言執行者の就任)の費用

司法書士報酬は、執行の対象となる財産の価格に応じて以下のとおりとなります(税込)。

500万円以下・・・・・・・・・・・・・27万5000円
500万円以上5000万円以下・・・・・価額の1.1%+22万円
5000万円以上1億円以下・・・・・・・価額の0.88%+33万円
1億円以上3億円以下・・・・・・・・・・価額の0.55%+66万円
3億円以上・・・・・・・・・・・・・・・価額の0.22%+165万円

※不動産の売却手続きを行う場合には、別途売却代金の3.3%以内(税込)の報酬を受領できることとします。

※登録免許税、送料等の実費は別途申し受けます。

※上記にかかわらず、執行内容が少額の預貯金解約手続きのみの場合など、簡易なものであるときは、事案に応じて低額料金を適用します。